日下武「ビジネスのツボ」第116回(ニューヨークビズ)
コロナ規制緩和後も売上がなかなか戻ってこない
最近、飲食業のクライアントから、「コロナの規制が緩和されて、コロナ前と同じ席数を使用しているのに売上がなかなか戻ってこない」という相談を受けます。偏(ひとえ)に飲食業といってもファストフードに近いお店や高級店、そのお店ごとのコンセプトにより解決策は異なります。
あるクライアントには、客数増加のためのマーケティング、プロモーションのアドバイス、また、違うクライアントには客単価アップのためにメニューのABC分析やデリバリーサービスの取り入れなどさまざまな提案をしています。
ただし、売上アップの基本的な考えは、売上=客数×客単価というシンプルな公式から始まります。「そんなことは、わかっている!」と怒られそうですが、飲食店の売上を伸ばすには、客数を増やすか、客単価を上げる必要があるということが重要なカギとなります。
客単価と客数、どちらを上げるか
私の経験上、あまり経営経験が少ない経営者は、すぐに客単価を上げて売上を上げようと考えます。新しくお客さんを増やすよりも、既存のお客さんの客単価を上げることのほうが簡単に思えるからです。
実は、客単価を上げるということはかなりリスクが高い方法になります。既存のお客さんは、その店の料理やサービスに対して、「値段とつり合いが取れている」と感じて選んでいることが多いです。店側の営業の内容、例えば、メニューやサービスのクオリティーが変わらないのにメニューの値上げだけをしてしまうと、値上げ直後は売上が上がったとしても、お客さんのリピートは止まってしまい、あっという間にお客さんは離れてしまいます。もし、今の段階で常連客がついている場合は、まず、客数を増やすことから考えたほうが安全策だと思います。常連客がついているということは、他の店よりそのお店について気に入っているところがあるということです。そうであれば、その気に入って頂いているところを調査して、もっと多くの方に知ってもらい、新しいお客さんになってもらう、つまり、客数を増やす可能性は十分にあると思います。
一方、最近の客単価の傾向についてですが、コロナ規制が緩和された後の高級店ではメニューの値段を上げていないにもかかわらず、客単価が上がっているようです。理由は外食の回数が減少した分、1回の外食に使う金額が増えているようで、高いメニューを注文する常連客が増えていると聞きます。このような心理的な原因も踏まえながら、売上アップの解決策を考えていくと可能性が広がります。
転載元(ニューヨークビズ)
https://nybiz.nyc/story/nagano-morita-vol116/